TAX de PAZZLE、2021年11月号の解答です。
ハチミツを売っているクマ君の店にタヌキがやってきて、4万円するハチミツを買いました。タヌキは5万円の価値がある金の塊をクマ君に渡しました。クマ君は近所のサルの店で金の塊を現金5万円に替えてもらい、タヌキにおつりの1万円を支払いました。タヌキが去ってしばらくすると、サルがやってきて、金の塊が石ころに変わってしまったから5万円返してほしいと言うのです。実はタヌキは悪者で、石ころを金の塊に変化させてクマ君を騙したのでした。
クマ君はしかたなく隣に住む友達のイノシシから5万円を借り、サルに支払いました。タヌキに持っていかれたハチミツの採取には3万円もかかったのです。クマ君は結局いくら損したのでしょうか?
ちょっとややこしい問題文ですが、せっかくなので、簿記の形式で時系列順に整理してみましょう。
①ハチミツの採取(仕入)
仕入 30,000 / 現金 30,000
②タヌキにハチミツの販売
金塊 50,000 / 売 上 40,000
/ 仮受金 10,000
③サルに両替
現金 50,000 / 金塊 50,000
④タヌキにお釣りの支払い
仮受金 10,000 / 現金 10,000
⑤イノシシに借入
現金 50,000 / 借入金 50,000
⑥サルに弁済
雑損失 50,000 / 現金 50,000
「いくら損したか」という問いに対しては、損益に着目します。損益計算書方式でまとめると、以下のようになります。
売 上 40,000
仕 入 △30,000
雑損失 △50,000
純利益 △40,000
両替したりお釣りを渡したりお金を借りたりといった行為は、損得には一切影響しません。というわけで、いくら損したかという問いに対する答えは、4万円ということになります。
・・・ただ、もう少し踏み込んで考えてみます。クマくんは、無価値の石ころを5万円の価値がある金塊と錯誤させられました。つまり、クマくんは、騙した張本人であるタヌキに対し、5万円を請求する権利を有しているのです。ということは、⑥の取引については、タヌキの行方をつかむことができず、どうやっても回収できないとなった時点で損失が確定すると考えることができます。それを踏まえて⑥の取引を仕訳であらわすと、
⑥’サルに弁済
損害賠償請求権 50,000 / 現金 50,000
となり、現時点では損失は発生しなくなり、クマ君の一連の取引の結果は、会計的考えに基づけば、1万円の利益ということになります。